本:『心の勝利』
Triumph of the Heart:
Forgiveness in an Unforgiving World
『心の勝利 許されざる世界で許すということ』
著者:ミーガン・フェルドマン・ベタンクール
ミーガン・フェルドマン・ベタンクールは、
私生活で別離を経験し、職業上でも挫折を余儀なくされて苦しんでいるとき、
アジムという人物に出会いました。
アジムは最愛の一人息子を殺した男を許し、
なおかつ彼の家族に援助の手をさしのべることまでしたのです。
彼は真の意味で安らかな気持ちでいるようでした。
ベテランのジャーナリストであるミーガンにとって、それは信じがたい話です。
自分が強い怨みを抱いていることを自覚していた彼女は、とまどいました。
彼はどこかおかしいのではないか。
それともおかしいのは彼女の方なのか。
人間の「許す」という能力について、彼女は考えます。
なぜそんな能力を持っているのだろう。
どうして私たちは許すのだろう。
果たして許すことが私たちの助けになるのだろうか?
『心の勝利』は、ミーガンが科学的見地と人間的見地から、
この複雑な概念を理解するまでの、探求の足跡が記されています。
ミーガンが援用するのは、最新の研究です。
それによると、許しを与えることによって、抑鬱感が和らぎ、高血圧が緩和されるという
健康面で良い影響がもたらされるといいます。
彼女は交通渋滞時のイライラや、配偶者の浮気などの日常の出来事や、
戦争犯罪などの想像を絶するような、さまざなな状況を検討します。
人々や共同体が、非常に厳しい状況においてさえ、許しをあたえてきた物語を通して、
ミーガンは、どうしてかれらにそれが可能だったのか、
そうして許しを与えた後に味わった深い解放感を明らかにし、
世界平和に向けての示唆を、私たちに与えてくれます。
許すことを通して、依存症から自分の人生を取り戻そうとする人々
学校での暴力行為を根絶するために、許しを与える技術を利用したボルチモアの校長、
ルワンダでの虐殺を生き延び、家族を殺害した加害者を許した人々、
自分の罪をあがなおうとする加害者たち、
ミーガンは、探求の過程で、さまざまな人に出会います。
その途中で、彼女は自分の、人を許す力が強まっていくのを感じます。
そうして、自分でも思ってもみなかった方向へと、彼女の人生は変化していくのです。
寛大さや共感をもって人を許すという人間の能力は、
その人を健康にし、幸福にするだけではありません。
癒され、成長し、より善く生きていくことのカギでもあることを、
ミーガンは明らかにしています。
(翻訳:服部聡子)