本:『イノベーターズ』
The Innovators:How a Group of Hackers, Geniuses, and Geeks Created the Digital Revolution
『イノベーターズ:ハッカーや天才、オタクたちの集団はどうやってデジタル革命を起こしたか』
著者: ウォルター・アイザックソン
著者のアイザックソンは世界的ベストセラー『スティーブ・ジョブズ』のほか、
数々の 偉人の伝記を発表してきました。
今回アイザックソンが取り上げたのは、19世紀、蒸気機関で計算機を動かそうとした時代から、
現在にいたるまで、コンピューターとインターネットを創造した、多くのイノベーターたちです。
電気のない時代から…
最初に登場するのは、なんと19世紀の詩人バイロンの娘のエイダ・ラブレスです。
家庭教師から数学の手ほどきを受けたこの女性は、1840年代に世界初のプログラム用コードを書きました。
電気回路さえ、いまだ構想の段階、という時代。
そのコードが動かそうとするのは、チャールズ・バベッジが構想した、
蒸気機関を動力とする「解析機関」と呼ばれるものでした。
残念ながら、この解析機関が実際に製作されることはありませんでしたが、
アイデア自体は今日の汎用コンピューターの元型となるものでした。
やがて20世紀に入ると、科学技術のめざましい発展を追い風に、
情報検索システムを構想したヴァネヴァー・ブッシュ、 人工知能の父アラン・チューリングなど、
今日のコンピューターの基礎を築いた人が登場します。
さらに、インターネットを構想した J・C・R・リックライダー、
コンピューターを単なる電算処理機械から、
集団的知性を利用するためのツールと転換させたダグラス・エンゲルバート、
集積回路を発明したロバート・ノイス、
そうして私たちにもおなじみのビル・ゲイツやスティーブ・ウォズニアック、
スティーブ・ジョブズ、 ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を考案したティム・バーナーズ=リー、
グーグル社を設立したラリー・ペイジ…。
わたしたちにとってはもはや「日用品」の、パーソナルコンピューターやインターネットが、
どのような失敗と苦闘の積み重ねの末にたどりついたものなのか、
読み物としても、非常に興味深いものです。
とはいえ、この本は単なるコンピューターの開発史ではありません。
著者は歴史をたどりながら、イノベーションがいかにして起こったかを探ります。
発明家や起業家が、ビジョンを現実へと実現させていったものは何だったのか?
成功した人と、失敗した人の間には、どのようなちがいがあったのか?
彼らはどのように知能を働かせていったのか?
彼らの発明の才は、いったいどこから生まれてきたのか?
聡明な個人が、チームワークを学ぶことで、どのように能力を開花させていったのか?
イノベーションをあらためて自分の問題に引き寄せて考えるとき、
この本は大きな示唆を与えてくれるでしょう。
さらに、組織と個人の資質はどのように連関させていくべきなのかを考える上でのヒントにもなっていく一冊です。
元記事:? http://amzn.to/1yks2do
(翻訳:服部聡子)