新時代のチームに求められるもの

by クリス・フッセル

 

 

高度25,000フィートで航空機の貨物ドアが開く。

闇と冷気が押し寄せ、

航空機のランプに立った特殊作戦部隊の周囲で渦を巻く。

いつでも飛び出せる構えを取っているチーム。

リーダーは暗視ゴーグル越しに闇をのぞき込む。

あそこだ! 

リーダーは片手でさっと闇の中の一点を指さす。

チームは躊躇することなく、黙ったまま闇の中に身を躍らせる……

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私たちの多くは、これまで選び抜かれた精鋭部隊について読んだり、

映画で見たりしてきました。

もしかしたらあなたもその中の1人かもしれません。

精鋭チームは大試合で勝利を収め、緊急治療室で命を救い、

世界中の紛争地帯で戦っています。

事実、状況を成功に導こうと思えば、

きわめて効率の高い少数精鋭部隊を作りだすだけで十分だった時代があったのです。

たとえば軍隊では、個々の戦闘部隊が、遭遇する敵より強ければ、確実に勝利できます。

つまり戦争に勝つかどうかは、部隊をもっとも効率的に配置できるかどうかにかかっていたのです。

 

アメリカの軍隊は、20世紀を通じて、効率性を至上とする階層構造を構築してきました。

上級幹部は、小部隊をどこに、どのように配備すべきか見定めます。

そうして若いリーダーは、戦場で少数精鋭部隊を率いて戦うことに集中するのです。

官僚機構は効率と管理を目的に、設計されました。

上意下達式の情報統制は、究極的には権力がどこにあるかを示すものにほかなりません。

このリーダーシップ・モデルは、とりわけ特殊作戦部隊で大きな効力を発揮します。

対処の困難な脅威は、世界中に存在しましたが、

そうした脅威も、それぞれが孤立したタコツボのようなものでした。

ですから、極めて効率的な少数精鋭部隊が、決定的な解決となったのです。

けれども、アルカイダによる9.11の攻撃以降、

特殊作戦部隊が理解したのは、21世紀の問題が抱える複雑さは、

20世紀型アプローチでは解決できない、ということでした。

情報が怖ろしい速さで伝播し、個々の人々が急速に相互に結びつくことによって、

まったく新しい型の戦場が出現したのです。

リアルタイムで相互に結びつき、増殖していく敵は、

強力ではあっても、対応に時間がかかる官僚的な機構の裏をかいて、

新たなネットワークを構築してきました。

携帯電話やユーチューブのアカウントさえあれば、

誰でもこうしたネットワークに参加できるのです。

少数精鋭チームの能力に頼るだけでは、解決できなくなってしまったのです。

 

あなたのチームのパフォーマンスを高めよう

 

今日における特殊部隊の重要な第一歩は、

私たちの経営モデルをシフトする必要がある、と認識することです。

トップダウン型の指揮、能率至上主義的な官僚機構の代わりに、

私たちは自分をネットワークに繋げていかなければなりません。

かつて私たちが下していた指令は、少数精鋭のチームの有効性を、

企業全体へと敷衍し、拡大していくことでした。

大勢のリーダーが、それぞれにチームを率いる代わりに、

私たちは自分自身をひとつのユニットとして、

広範なネットワークに繋げていかなければならないのです。

私たちは縦割り組織の仕切りを取り除いて、

情報の共有や、リーダーシップ、コミュニケーションについての

思い込みを変えていかなければなりません。

 

情報が、小さなグループ単位で細切れにされていたところであれば、

グループ間の境界を取り払い、可能な限りシェアするようにします。

ユニット同士が壁で仕切られ、隔てられているところであれば、

私たちのオペレーション・センターと地上部隊は、

民間の諜報員、特殊工作員、提携相手の混成になっています。

 

かつてコミュニケーションが、組織の中の2点間通信であったのなら、

私たちの時代のコミュニケーションは、世界中の数千もの人々が最新の情報を聞き、

利用できるテレビ会議システムから始めなければなりません。

数年間の変化ののち、私たちは分散型ネットワークのスピードと俊敏さを適用するようになるでしょう。

これは、今日の世界では、どんな大きな組織でも必要なモデルです。

かつて企業は垂直的なグループを効果的に作ることに専念すれば、

競争を制することができました。

けれども今日の世界で、ネットワークモデルを用いているリーダーは、

個々の戦いに目を向けたままの競合を、すばやくしのぐことができるのです。

 

重要なのは、特殊部隊は組織を少しも変更することなく、

この転換を行おうとしたことです。

そうして精神面や、コミュニケーション、リーダーシップの転換を図ったのです。

組織に真の力を与え、ネットワークとして考え、行動し、動けるかどうかは、

今日のリーダーにかかっています。

それは、トップから始まる、精神的な転換なのです。

ネットワークモデルを採用するためには、あなたの組織は、以下のステップが必要です。

 

1. 他チームとの提携を構築する

あなたのチームは、組織の戦略的なビジョンに関して、

本当の意味で意志一致ができているでしょうか。

私たちの場合、できていませんでした。

そのため私たちは戦闘地域の真ん中で、動けなくなってしまったのです。

チームが異なれば、組織に対するビジョンにも違いが生じ、競い合うことにもなります。

その結果、互いに食い違った行動を取ることにもなってしまいます。

提携することなくしては、複雑な問題を解決しようとしても意味がありません。

なぜなら、ネットワーク化された複数チームのうちのひとつとして、活動できないからです。

 

2. 一体感と透明性を推進する

複雑な世界の中で、ものごとは従来のシステムではあまりに速く、動き、変化するために、

従来の機能的チームでは、とらえることができません。

大勢の人を現実のコミュニケーションに引き込めば引き込むほど、

さまざまな観点からのリアルタイムの洞察が集まり、

問題を、より素早く、より正確に解決することができます。

 

3. 共感を持って指導する

あなたに従う人の動機と視点を理解することによって、

あなたはより有能なリーダーになることができます。

トップダウンの時代の「従うか、出て行くか」というリーダーシップの時代は終焉しました。

ボトムアップ式に浮かび上がってきた知識は、創造的なアイデアを組織に蓄積することになり、

さまざまな視点を理解することが、あなたのネットワークをより良いものとし、

情報の裏付けのある決断をさせてくれます。

 

すばらしい力をたくわえた小さなチームは、もはやあらゆる難題の解決とはなりません。

巨大な組織が、ヘルスケアから軍事装置にいたるまで、小さなチーム同様に、

すばやく効率的に動ける組織へと、移行していかなければなりません。

一連のチームを有機的に提携させたチームを導くことが、

21世紀を勝ち抜く戦法なのです。

 

 

 

ハーバード・ビジネス・レビュー


元記事:https://hbr.org/2015/07/make-your-team-less-hierarchical

(翻訳:服部聡子)