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マーケティングの集客を成功させる秘訣は「季節感」

こんにちは、トイアンナです。
大変遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。日本にお住まいの方であれば、新年には家族でおせちやお餅を召し上がったかと思います。つまりおせちを作るお弁当屋さんやお餅を生産する工場にとっては12月~1月が儲けどきと言えます。

もっと市場が潤うのはクリスマスです。ギフト商品からラッピング、飲食店からヘアサロンと、恩恵を受けた方も多かったのではないでしょうか。

このように「季節感」は売上アップを考える上で欠かせない要素です。季節のイベントへ便乗することでいつもより売上や集客を確保できますから、時期を絞って広告費を集中投下するマーケターも多くいます。

この記事では2016年、季節を利用して成功したマーケティングの事例を振り返りつつ自社にも応用できる成功の秘訣をお伝えします。

「季節感」の利用例1 夏も売場を独占する空気清浄機

まずは昨年「ドヤ家電」と流行した蚊取り機能付き空気清浄機を見てみましょう。

一般的な空気清浄機の売上が上がる季節は春と夏。どちらも花粉が飛ぶ時期です。春には飛ぶように売れる空気清浄器ですが、夏には家電売り場の奥へ引っ込むさだめ。代わりに家電屋のメイン売り場には除湿機能つきのエアコンや扇風機が並びます。

その運命をひっくり返したのが、蚊取り機能つきの空気清浄機でした。虫を引きよせるUVライトで引き寄せ、空気清浄機の力で吸い込むという極めてシンプルな機能を付けました。春の花粉から夏の蚊取りまで、季節感を応用して2シーズンの売り場を確保したのです。

さらに「有害物質を使わず蚊を除去したい」ニーズに応えた製品は大ヒット。長年売上低迷に苦しんできた発売元のシャープにとって、久々のポジティブなニュースとなりました。売り場を確保する営業力と、季節感を活用したマーケティングの融合による成功例と言えるでしょう。

「季節感」の利用例2 クリスマスに売上を伸ばしたパン屋

次に海外の事例より、クリスマスを活用したマーケティング集客テクニックをご紹介します。

クリスマスは日本人がケンタッキーでお買い物して、ケーキを買うのが一般的です。同様にイギリスには七面鳥やクリスマスプディング、パイなどの定番メニューがあります。これらの店舗が爆発的に売れる一方で、普段より売れなくなってしまう飲食店もあります。たとえば普通のパン屋さんは、12月にプディング需要のせいで売上を落とすのが通例でした。

ところが同じ季節感を活用し、この運命をひっくり返したパン屋があります。グレッグズというパンのチェーン店は、普段なら閑散期になる冬を狙って「チキンの香り」「パイの香り」を付けたリップを無料配布しました。
http://metro.co.uk/2016/12/15/greggs-is-now-doing-lip-balms-that-taste-like-mince-pies-and-festive-bakes-6324801/
「クリスマスにパンを買う気は起きないけれど、クリスマス関連グッズなら興味が湧く」というインサイトを利用したのです。この無料配布で「クリスマスの香り」が欲しいとパン屋へ人が戻っただけでなく10誌以上にキャンペーンが掲載され、高いPR効果も手に入れました。

通常、サンプリングは自社製品を配るだけのことが多いのですが、季節感を取り入れるためあえて「クリスマスの香り」を集客に利用した好例です。

「季節感」を上手に使う方法

このように季節感を上手に使えば、普段は閑散期として諦めていた売上を爆増させることも夢ではありません。ただし1点だけ注意事項があります。闇雲に「季節限定」といっても売れるわけではないのです。極端な例ですが「春限定!五寸釘セット」があっても売れないのは容易に想像できるでしょう。

これらは、ベンチャーから中堅企業でも少ない予算で始められる「季節感」の条件です。

(1)  すでに盛り上がっているイベントへ便乗する
バレンタイン、ハロウィン、クリスマスなど、国民全体の財布のひもが緩むイベントへ便乗しましょう。ゼロからイベントを作って認知させるには大型投資を必要とするからです。

(2)  自社を使ってイベントを「盛り上げる」
事例でご紹介したパン屋が「クリスマスの香りのリップ」を配ることはパンと何の関係もありません。しかしクリスマスの盛り上げに貢献したことで売上に繋がりました。

新しい季節感のあるマーケティング企画を立てるなら自社製品を押し出すことより「どうすればイベントをもっと盛り上げられるか」を考えます。お客様は「イベントでもっと盛り上がるもの」を広く探していますから、自然と普段は来ない層も来客を見込めます。

(3)  他社にない試みで季節を盛り上げる
たとえば今からカフェが「桜のラテ」を考えても、スターバックスのコピーになってしまい爆発的な売上は考えられません。同業では始まっていない試みにチャレンジしてみましょう。同じカフェ×春の季節なら「お花見用ランチボックス」などいかがでしょうか?

世界中で集客に利用されている「季節感」を利用したマーケティングで、きっと御社もヒット商品を生み出せます。季節を盛り上げて、ますますのご繁栄をお祈りしております。

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toiannaトイアンナ

大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。

ブログ:http://toianna.hatenablog.com

マーケティングはピンチを操る 英国のEU離脱を活かした集客ビジネス

こんにちは、トイアンナです。
私は今年よりイギリスに住んでいますが、ブレグジット(英国のEU離脱)が決まったときは国全体が「しばらく終わりだ」という沈痛なムードに包まれていたのを思い起こします。イギリスはブレグジットが決まってから一夜にしてポンドが暴落。実に2/3の価格となりました。つまり、国の価値の1/3が吹っ飛んだのです。

もともとブレグジットが起きた背景は「テロや犯罪を起こしそうな移民はいらない」という排外感情。EUから移住している外国人も事によっては帰国せざるを得なくなります。さらにヨーロッパ金融の中心地という立場も失うため、経済は冷え込むと予想されていました。これがポンド暴落として現れたのです。

ところが、そんな危機を乗り越えるどころか、むしろ追い風にしたビジネスがイギリス国内にありました。外食産業です。今回はその外食産業がいかにマーケティングを駆使して集客を成功させたかをご紹介します。

イギリスは「おいしい」!?

さて、「イギリスといえば」と質問されれば紅茶、クラフトビール、そしてまずいご飯……と連想ゲームで出てきてしまうほど、ご飯のマズさは有名です。私も渡航して現地のミシュランガイドを買い、まさかの見開き2ページでロンドンの星付き店が尽きたときは絶望したものでした。

ところが実際に食べ歩いてみると、「グルメの首都」と称賛される日本ほどではありませんが、以前に比べて「おいしい」店は確かに増えている印象です。おそらくはこれ、EUの賜物。イタリアやスペインなど食事が美味しいEU圏国家からの移民に、香港統治時代から移ってきた中国人などが腕を振るっています。さらに食べる側にも移民がいることから味への要求水準が上がり、かなり改善されています。

そしてブレグジットが決まったとはいえ、すぐさま「はい、もう出て行ってくださいね」と法律が一朝一夕で変わるわけでもありません。現在もEU市民はロンドンを中心にその手腕を発揮しています。むしろブレグジットで変わったのは、イギリス人の振る舞いでした。

ブレグジットに便乗した外食産業

ブレグジットから発生したポンド安を理由に、イギリス人は海外旅行へ行かなくなりました。弱くなってしまったポンドでは豪遊できないからです。ブレグジット前はわずか数千円払えばヨーロッパへの航空券を買えた彼らも、今年は控えめに

その分の娯楽費が、国内へ回ります。今年のイギリス人は休みの日や特別なお祝いを国内のパーティや外食で済ませることにしました。その結果、にわかに国内の外食産業が昨年比12%もの盛り上がりを見せています

さて、このチャンスをつかんだのがデリバリー業界でした。イギリス人はもともと料理をあまりしません。専業主婦でもピザを温めるくらい。であれば、レストランは看板に「配達も承ります」と付け加えた方が得策です。マーケティングに長けた企業はいち早く自転車でのデリバリーを開始しました。食事は温かいうちに届けなくてはいけないため、バイクや自家用車で遠征するより近隣に素早く届ける方が喜ばれます。集客に長けたレストランは「店内の回転数以外」で売上をたたき出したのです。

Uberによる代理デリバリーも

そして、さらにマーケティングの才覚ある企業が存在しました。ウーバー・テクノロジーズが運営するタクシーのブランド、Uber(ウーバー)です。Uberはデリバリーをする余裕がない飲食店のために自社スタッフによる代理デリバリーサービスを開始。日々の食卓から豪華なホームパーティまで、デリバリー文化を一気に広めました。このサービスは日本へも上陸。東京の一部地域で利用できます。

Uberのサービスは簡単に言ってしまえば、お店の料理を家まで自転車で運ぶだけ。そんな単純なニーズがこれまで世界中で満たされていなかったのです。このようにマーケティングでは「誰もが欲しかったのに気づいていなかったニーズ」を満たすと、一気に集客を獲得できます。

優れたマーケティングはピンチからチャンスを見つける

このように、一見誰もが「もうだめだ」と落ち込むような経済や政治状況であっても、巡り巡って集客、販促のチャンスをつかむことはできます。そのために必要なのは、チャンスを見つけたときにすぐ動くこと。さらに言えば、いざとなったらすぐ動けるような稟議・承認システムを用意することです。

マーケティングではよく「シンプルなものが強い」と言われます。売上に繋がるコンセプトやキャッチコピーもそうですが、社内のしくみもシンプルであれとよく言われます。これからを生き抜くため、変化へ迅速に対応すること、「誰もが欲しがっているのに気づかれていないニーズ」を発掘するのと同時に、チャンスを見つけたらすぐ投資できるよう無駄な承認システムを削ることが成功への近道です。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
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会社が盲目になって道を踏み外すさないために

ここのところずっと、このことを考えてきました。
つまり、企業は一体どこで道を踏み外してしまうのだろうか、という問題です。WELQやまとめサイトのコピー記事で、企業倫理が話題になっています。チームが増え、事業部が増えていけば、経営者が目を通せる内容は限られてきます。末端まで企業倫理を浸透させ続けることができるかどうか、他人事ではなく、私自身も含めすべての経営者にとって非常に怖い問題ではないかと思うのです。

企業にとって、利益を上げることは「善」です。使命です。ROIを上げることは経営の至上命令です。出資した株主に対してリターンを戻せないことには、人間失格の刻印を押されます。自社を高額で売却することは、経営者としての手腕であり、最も評価される部分です。

と、ここまで書いてくれば、おわかりでしょう。
若い人生経験も少ない経営陣にとって、社会から求められる「善」をまっしぐらに追求した結果が、 WELQの村田マリさんであり、高額アフィリエイターであり、情報商材やマルチ商法であるわけです。彼らをもてはやしながら何かあればさっさと突き落とす。この構図はいつもよく見るパターンです。国の予算をバッサリ丸ごと持って行く広告代理店さん、そして大勢に影響のない個人を攻撃する大手メディアのお得意の構図です。

個々の方々は、才覚があり、優秀な方々だと思います。
だた、長く成功し続ける企業人と、一つだけ差があるとすれば、それは「経営者の品格」ではないでしょうか。そして、その「経営者の品格」とは何かを、深く深く追求した結果、ジェイエイブラハムは「卓越論」を著しました。多くの経営者と接してきて、一時はうまくいってもやがてどこかでつまづく。一方でそれほど急激に頭角を現さず目立たないが、やがて大きな成果を上げていく経営者がいる。その差は何かを知りたくて、非常に長い時間をかけて優秀な経営者にヒヤリングした結果、あのレポートが出来上がりました。

社員はいち早い利益化を急ぐものです。実績を上げ、成果を手にし、少しでも豊かな暮らしへと邁進する。それが本当に素晴らしいスタッフです。でも、それだけではないことを、経営者は言語ではなく「振る舞い」において示し続ける必要があるのです。結局のところどこから登っても、経営の道は「卓越論」に行き着くのです。それを深く掘り下げ、社員に徹底していく。苦しくてもぶれない姿勢が経営者には必要です。

ですので、経営のバイブルとして今でも世界各国で読み継がれるのでしょう。ぜひ手にとってお読みになっていただきたいのです。一流の経営者の方々が、膝を打ち、チーム教育に取り入れたいと思われるはずです。もし何もひっかかるところがなければ、それは逆に自らの経営理念を疑う必要があると思います。人は成長すればするほど、物事を深く読み取れるようになるものです。

さて、原題:Strategy of Preeminenceですが、過去には「卓越の戦略」と訳されていましたが、タイトルがジェイエイブラハム本人の意図するところから外れるのではないかということで、「卓越論」としました。Strategyは確かに「戦略」ですが、この頃は、ドラッカーが戦争用語の「戦略」を経済用語に取り入れたばかりで、まだ一般に浸透しておらず、現在のような使い古されたコンサル用語ではありませんでした。またジェイエイブラハムはその意図を、「理念」というような意味で逆説的に使っています。その深い意味を鑑み、あえて薄い意味に捉えられがちな「戦略」を外し、「論」としました。その経緯もきちんと新訳には解説してあります。

翻訳チームが頭を抱えながら精進した、ジェイエイブラハム翻訳の経験を全てつぎ込んで新たに訳し直し、「経営塾2016テキスト」に収録しました。その和訳の意図や悩んだ箇所も、注釈をそのまま入れました。聖書のように長く読み解いていただければ本望です。メンタークラブでは地域の勉強会でも取り上げます。

 

 

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島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの
東アジアディレクター(交渉代理人)。
ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。

 

成功する美容室の秘密は「ホワイトスペース」

ご自宅の最寄り駅に、美容室は何軒ありますか?
私が大学時代に住んでいた東京ののどかな住宅街は、駅前に美容室が4、5件もあって
「さすがに多すぎないか」と考えたものです。

当時はマーケティングの知識もなく、美容室はさぞかし利益率が高くて、
顧客の人数が少なくても経営できるんだろうなあ、なんてマヌケな予測を立てていました。

感覚だけでなく、データからもすさまじい美容室の軒数が把握できます。
平成24年のデータによれば、美容室の件数は23万。1,134550人に1軒美容室がある計算です。

そう思うと「あれ? まだ余裕がありそう?」と思うかもしれませんが、
あれだけどこにでもあるコンビニですら全国に約52,000軒しかありません。

他国と比較しても、私が住むイギリスには約1600人あたり1軒の美容室がある計算。人口当たりの競争率は3倍。
日本の美容師さんは、熾烈な競争へ巻き込まれています。

その一方で「成功できる」美容室の条件はこの数十年で大きく変わったわけではありません。
大手美容室を調べていくと、成功するキーワードは「参入障壁の高い差別化」にあることが分かります。

参入障壁とは、マネする大変さ

参入障壁とは、ある企業が市場へ加わろうとするときに払わなくてはいけないコスト。
もっと簡単な例として、あなたがレストランを開くとしましょう。
これまで1店舗もレストランを経営していない人は、塩・コショウからフライパンまで用意するだけで、準備にお金も時間もかかります。
安くて高品質な材料を手に入れる卸もわからず、最初は高値で買ってしまうかもしれません。

それと比べていくつかレストランを経営しているなら、調理器具はお下がりでもスタートできますし、
いい材料の入荷元もあらかじめ知っているので有利です。
このように新しく開業する人は、すでに業界にいる人と比べて高いコストを払います。
これを参入障壁と呼びます。

参入障壁の高さは「マネする大変さ」

さて、参入障壁には比較的マネしやすいものと、されにくいものがあります。
お金や手間がかかるもの、そのブランドでないと強みを発揮できないものは参入障壁が高く、
誰でもすぐマネできることは参入障壁が低くなります。

たとえば、美容室のポイントカードは参入障壁が低いアイディアです。
どの店舗でも今すぐ始められるからです。
逆にVIP専用のシアタールームを美容室内に用意するのは初期コストが高く誰にでもできることはありません。

競争が激しい業界で勝ち抜くには「他店がすぐにマネできない施策」を打つことが大切です。

ホワイトスペースを探し出そう!

ここで、ホワイトスペースという考え方をしてみましょう。
ホワイトスペースとは、ライバルがまだ進出していない領域のことです
たいていは参入障壁が高すぎるか、それが売れるなんて誰も思ってなかった! という理由で放置されています。

たとえば「お~いお茶」の発売当時は、日本人はお茶を家で淹れるからわざわざ金を出す人間なんかいるわけないと思われていました。
しかし現在は伊藤園の看板ブランドです。
ホワイトスペースをしっかり掴めば「日本初」の称号を得られます。

ホワイトスペースを今度は美容院業界で考えてみましょう。
ご自宅などで髪を切る訪問美容師は、これまで要介護で動けない方など一部のお客様に限られたサービスでした。
これを富裕層の忙しい方へ向けて行い成功した方がいます。
「誰も手を付けていないところ」へ最初に進出することでその場にある利益を独り占めできるのです。

上記とは真逆ですが1,000円カットも「簡単でいいから安く切ってほしい」というホワイトスペースを開拓したものでしょう。

2つを組み合わせると「長期的に成功できる」

まずは、あなたの業界でホワイトスペースを探してみましょう。
たとえばネイリストがいるヘアサロンは多いですが
「ご飯を食べながらカットできる」サービスがあればホワイトスペースかもしれません。

レストランの隣に出店してその店と協働するだけで用意できますから、難易度もそこまで高くありません。
食品営業許可申請が必要になる可能性が出てくるなど確認したいポイントはありますが、
忙しくてヘアサロンも行けない高収入ビジネスパーソンに受けそうです。

ただし、この案だと参入障壁が低い(=誰でもマネできそう)のが難点ですから付加価値をつける必要はあります。
たとえば体に優しいオーガニックフードを選べる、限定メニューがあるといったものが付加価値の例です。

まずは、ホワイトスペースと呼べそうな新しい領域を探してみましょう。

そして次に参入障壁の高い戦略を選ぶことで、長期的に勝てる場所を見つけてください。

あなたが日本初の〇〇としてメディアに引っ張りだことなるのも、近い未来かもしれません。

 

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

チェーンに学ぶビジネスの勝ち方:1億杯のコーヒーを1週間で売る

こんにちは、トイアンナです。

イギリスといえば紅茶のイメージがありますが、実はその国に激震が起きています。
実は現在、イギリスはコーヒー大国。コーヒー店業界の売上は17年連続で上昇しており、
昨年だけでも10%市場が拡大しなんと1兆円市場へ到達。夢のような成長ぶりです。

それをけん引したのが、日本でいうならエクセルシオール、ドトールのようなコーヒーチェーン店です。
イギリス国内でコーヒーショップの数は20,000店舗を超えており
日本のスターバックスやドトールコーヒーの1,000~1,400店舗数と比較すれば、
非常に大きな市場であることがわかります。

そこで今回は、代表的な3ブランドをご紹介することで日本のカフェ経営にも応用できる
「成功の秘訣」をお伝えいたします。

なお、実際の3ブランドの店舗写真をご覧になりたい方はこちらをご参照ください。
イギリス情報 | お気に入りのカフェはどれ?

コスタ:コーヒーの先駆けという誰にも勝てない強み

初めてイギリス人を紅茶党からコーヒー党へと動かしたのがカフェ「コスタ」です。
コスタは1971年創業の老舗で、イギリスへコーヒー文化を持ち込む先駆者となりました。

特に大きなカップで紅茶を何倍でもお代わりするイギリス人にとって、
の直径10cmはあろうかという大きなカップで
コーヒーを「ごくごく飲む」という発想がぴったりフィット。
在でも2,000店舗以上の大規模チェーンとして愛されています。

日本で応用できる点:イノベーションを起こし業界をけん引する

マーケティングで最も影響力が強いとされるのが
「この世に無かったものを消費者に提案すること」、通称イノベーションです。
まだ流行っていない製品やマニア向けサービスを一気に広げることでブームを巻き起こします。

製品を広めた最初の1社目はその後もトップシェアでいられることが多く、
「コーヒーと言えばコスタ」といったイメージを植え付けられます。
日本の例なら「コーラといえばコカ・コーラ」あるいは「航空会社と言えばJAL」といったものです。
ただし、イノベーションを巻き起こすためには認知度を急激に上げる必要があり、得てして広告費がかかります。

カフェ・ネロ:美味しいコーヒーが飲める唯一の店

さて、業界1位のコスタには大きな欠点がありました。
コーヒーがそこまで美味しくなかったのです。
決してマズいとまでは言いませんが、当時のコーヒーは「紅茶ほどは美味しくない」くらいの位置づけでした。

そこでカフェ・ネロは「どこよりもおいしいコーヒー」を純粋に追及し、
イタリア風の濃いコーヒーを展開して一気に質を向上させました。
カフェ・ネロが登場するまで、多くのコーヒー店では目の前でインスタント粉コーヒーを入れるだけ、という店も多かったイギリス。

カフェ・ネロはひき立てコーヒーを提供することで、
チェーンに限らず全国のコーヒー品質を向上させる革命を起こしたのです。

日本で応用できる点:質で勝ることで1位の座を揺るがす

イノベーションを繰り返す企業は先進的な反面で、品質に劣ることがあります。
たとえばソニーのウォークマンは1990年代まで時代の寵児でしたが、
その一方で「ソニータイマー」とも揶揄される品質の欠陥が指摘されていました。
そこで品質を求めた消費者はパナソニックなどの他ブランドを選んでいました。

このように先頭を走るブランドが逃している品質に目を向け、
そこで圧倒的な差別化をすればトップを揺るがすライバルになれるのです。
現在でも誰もが知っている製品で、質で劣るものはないでしょうか。
そこが、あなたが次に勝てる場所です。

プレタ・マンジェ:オーガニックという新しい軸で独自展開

「プレタ・マンジェ」は他ブランドに比べて創業も遅く、コーヒーチェーンでは後塵を拝していました。
ただの品質、ただのイノベーションでは勝てない。
圧倒的不利な状態から生まれたのは「大規模チェーンが決してできない戦略」を狙うことでした。

まず、「プレタ・マンジェ」は添加物を使わないオーガニック食品を使い、都心に展開しました。
特に環境や有機野菜に関心がある都会の裕福なビジネスパーソンを狙ったのです。
こういった「全国的に人数が少ない」相手へ売り込むことは、
すでに大きくなりすぎたチェーン店にとって難しくなります。

「プレタ・マンジェ」の手作りサンドイッチは味も美味しく、健康志向の富裕層へ大ヒットしました。
日本で例えるならナチュラルローソンや、成城石井の成功例がこれに近いと言えるでしょう。

現在はより激しくなった競争に打ち勝つため「筋トレ用の美味しいたんぱく質メニュー」や
「ベジタリアンが満腹になるお弁当」といった、
これまで「味に妥協してきた人」を満足させる品ぞろえとなっています。

日本で応用できる点:大規模チェーンができない「少ない人数」を狙い撃ち

日本でもダイエット中の方、筋トレに励んでいる方向けのメニューを用意できているカフェはほとんどありません。
日本でも「偏食しませう」という強烈なキャッチコピーで
筋トレしている方が食べられるお店「b-ZONE」がヒットしています。

このように「今まで誰も狙ったことのない消費者」へ目を向けることで、
コアなファンを作るのもマーケティングの手法です。
メリットは広告費が無くても口コミで広がりやすいこと、
デメリットはある程度人口がない地域で実施すると
「該当する人が10人くらいしかおらず、商売にならない」恐れがあることです。
この戦略を取られるのであれば、必ず
お住まいのエリアにどれくらいコアなファンがいるかを概算してからにしてください。

ここまで、イギリスのコーヒーチェーンを参考に
日本で勝てるマーケティングの方法をご案内してまいりました。
大規模な市場も、街中のお店も初めは同じ1店舗。
そこからあなたが成功するためにも、先人の知恵を活用していってください。

参考資料:
スターバックス 店舗数
http://www.starbucks.co.jp/company/history/
ドトールコーヒー 店舗数
https://www.doutor.co.jp/about_us/ir/report/fcinfo.html


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
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マーケティング深化論:目次

◆ 目次 ◆
第1回:マーケティングはビジネスの「人間ドック」

第2回:「マーケティング」の基礎知識:モテる人はお断り

第3回:美容室をヒットさせるにはイケメンを雇え!?

第4回:売上に繋がるエクイティの育て方

第5回:「差別化」の秘密

第6回:ビジネスにも多い「差別化ごっこ」

第7回:競合分析とは

第8回:売上を6割上げた奇跡の旅館に学ぶ「競合」の考え方

第9回:差別化マスターへの道

第10回:ペルソナ」で分かるマーケティング

第11回:優秀な経営者だけが知っている「売れない」につける処方箋

第12回:テストプランの重要性:彼女にあげたいプレゼントから学ぶ

第13回:全員が活躍したくなる会社とは

第14回:マーケティングで判る恋愛論

第15回:チェーンに学ぶビジネスの勝ち方:1億杯のコーヒーを1週間で売る

第16回:ビール会社の差別化:飽和市場で成長するための挑戦

第17回:成功する美容室の秘密は「ホワイトスペース」

第18回:マーケティングでV字回復を狙うイギリス紅茶市場 集客を取り戻す差別化の鍵は?

第19回:マーケティングはピンチを操る 英国のEU離脱を活かした集客ビジネス

第20回:マーケティングの集客を成功させる秘訣は「季節感」

第21回:集客を考えるときはマーケティングと「善悪」を切り離そう

第22回:「雨が多いイギリスで傘を売るな」マーケティングで欠かせないヒアリングの技術

第23回:安易な無料配布で700人のリストラ!?マーケティングの失敗例に学ぶ

マーケティングで判る恋愛論 :彼女が欲しいなら…

こんにちは、トイアンナです。
最近ナンパ教室というものが流行っているようで、受講者のお話を伺うこともあります。
その名の通り街中でナンパするテクニックを教えてくれる講座なのですが、今まで彼女がいたことのないオクテ男子がこぞって参加しているようです。オクテ男子にとっては、ナンパ師が「女性を口説くプロ」に見えるので、説き方を教えてほしくなるのでしょう。
彼らはいつか女性を口説けるようになって、彼女を作るぞと頑張っています。

ところで、あなたの友達が「彼女が欲しいけど、どうしたらいいか分からないから」ナンパ教室へ参加していたらどう思いますか?
教室では1日100人に声をかけて連絡先をゲットする方法や、偶然を装って出会いを演出するテクニックを教えてもらえます。
もしあなたが賢明なら、その友達に「もっと上手い彼女の作り方があるんじゃないか」と再考をうながすと信じています(笑)

ではなぜナンパを頑張っても、彼女を作るのは難しいのでしょうか? 実はそこに、マーケティング論がかかわってきます。

目的を意識すれば、戦略ミスがわかる

ナンパ教室に通う友達の目的が「彼女を作る」だとすればそのためにするべきことも当然、彼女作りに効果がなくては意味がありません。
しかしナンパの目的は「不特定多数の女性をものにすること」なので、2者で目的がずれてしまっています。
おそらくナンパ教室へ通えばゆくゆくは100人の女性と関係を持てるでしょう。しかし心の通い合う付き合いをして、結婚を考えられる女性に出会って……という目的とは合致していませんから、下手すると「どうせナンパに引っかかるような女しかこの世にはいないんだ」と女性不信になってしまうリスクすらあります。

目的が「彼女を作ること」なら、ナンパ教室よりも女性が多くいる習い事を始めたり、友達にお願いして共通の知人を紹介してもらったりしたほうが信頼のおける女性と出会えるはず。目的に適った戦略を立てれば、リスクも少なくなります。

そのマーケティング、目的に適っていますか?

今回はナンパ教室という変わったたとえから始めましたが、目的の考え方はビジネスの現場でも同じです。私はこれまでに様々な企業マーケティング支援をしてまいりましたが、強く感じているのは目的からズレているものへ予算を投入しても浪費になってしまうということ。

マーケティングでは少ない投資で爆発的に売上を伸ばす火薬を作れることもあれば、どんなに注いでも一向に返ってこない浪費になることもあります。その大きな差は「目的」をきちんと設定できているかどうかです。

たとえば「レストランのリピーターを増やしたい」という目的なのに、お友達を連れてきてくれたらディナー10%割引キャンペーンをしていたら、増えるのは新規顧客ばかり。目的に合わない戦略を選んでしまったがために、利益率が下がるだけとなります。

今なにが経営で問題になっているのかをまず洗い出し、その問題を解決する目的をまず設定しましょう。そして目的がかなう戦略は何かを考えましょう。問題を解決できない目的を設定してしまうと、ウェブマーケティング、マーケティング3.0といった新しそうな横文字に踊らされてお金をドブへ捨てることになります。

あなたの仕事を伸ばすうえで、一番の課題は何でしょうか。その課題を解決する「目的」はどういったものでしょうか? 思いついた戦略は、目的を達成できそうですか?

この考え方を日常的に持っていられるなら、もう新しい言葉に踊らされずに済むはずです。少ない予算で最大の成果を出すマーケターとして、一緒に歩き始めましょう。

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トイアンナ
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新著に『恋愛障害 どうして「普通」に愛されないのか?』(光文社新書)

小さな会社が勝つためのマーケティング主導型もの作り

アメリカでマーケティングが進んできた理由は、人種が多種多様で様々な価値観を持つ人が集まる国であり、「阿吽の呼吸」や、そこはかとないイメージ戦略では、商品やサービスの内容が伝わらなかったためでしょう。

さらには、国土が広いので、ダイレクトマーケティングである通販が非常に早くから進んでいる点も、マーケティングが発展した大きな理由でもあります。

日本では、マーケティングと言えば、さすがに市場調査や、宣伝のことを指す人は少なくなりましたが、それでもまだまだ、中小企業では馴染みの薄い分野ではあります。オンラインで、情報弱者を釣り上げる手法を「マーケティング」と称して来た一部の人が居た事実も、そのイメージを損ねる原因になりました。

ですので、私は、人によって捉え方の幅がある「マーケティング」という語句を、なるべく使わないように執筆することにしていますが、実際は、マーケティングと経営は切っても切り離せません。ちなみに、英語ではSales=販売なので、日本語の「営業」にあたる言葉がありません。誤解を承知でかなり大雑把にくくると、本来の御用聞きの意味での「営業」は、そのまま英語的なマーケティングと言えるのではないでしょうか。ですので、私は、マーケティングと言いたいところを、ライティングの際に「営業戦略」などと書き換えることもあります。

『限界はあなたの頭の中にしかない』執筆の際に、ジェイ・エイブラハムに「ジェイにとってのマーケティングとは何か、定義してほしい」と聞いた際、しばらく考えさせてほしいと数日経ってから、

私にとってのマーケティングとは、顧客がより良い人生を歩むために導くこと。守り育てることに他ならない

との、非常に深遠な答えが返ってきました。この言葉は、単に「顧客を教育する」という辞書的な訳では誤解を招きます。彼のこの定義の前提となる、「ビジネスとは道である」という理念の上に立ち、理解を進めなければなりません。ジェイは、ビジネスという営みを通して、自らをより高みに磨き上げることという信念のもとに、マーケティングを定義しているからです。

ただ、誰しも自分のことはなかなか客観的に見えないものです。私自身も自らの戦略は、各方面のプロにアドバイスを受け、常に見直しをかけ続けています。ほんの小さな誤差が、1年後には取り返しのつかない「ズレ」になる場合もあるからです。目先の数十万円は確かに惜しいかもしれませんが、それをケチってビジネスがダメになることの方が、もっと怖いと思うからです。経営者は、従業員や取引先などチーム全員の人生を守る義務があります。

ところが、販売力や製品力があり、人脈と力技でそれなりの成功を勝ち取られて来た経営者の方々は、今はなんとか食べていけるだけに、戦略見直しを痛感している人は少ないものです。

ある地元の名士がおっしゃいました。
「もっと、とことん落ちるところまで落ちないと、気づかないんちゃうかな」と。

その言葉を裏付けるように、SONYから分離して以降赤字で、他社との統合構想が破綻に終わったVAIOは、IDCジャパン2015年国内パソコン出荷台数によると、他社が軒並み前年費マイナスになる中、前年比384.7%と躍進しました。国内シェアがわずか1.8%であるにも関わらず、です。

 

 

 

 

 

 

http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20160218Apr.html

日経新聞の取材によると、VAIOは、

 薄型・軽量で高性能を売り物にした10万~20万円程度のノートパソコンが軸で、市場で売れ筋の数万円の機種は扱わない。

(7月26日)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26I6Z_W6A720C1TI1000/

と、マスマーケットを敢えて避け、技術者を営業に出向かせるなど、マーケティング主導のものづくりに戦略変更することで黒字転換。今期のさらなる増益を見込むとのことです。

つまり、経営陣こそが、マーケティングを深く理解する必要がありますし、「もの作りニッポン」にその知恵が日本式営業戦略に融合され、アレンジされていくことで、日本は、世界でまだまだ勝ち抜いていけると考えています。

具体的に小資本の企業が、ニッチ戦略を取り入れるための手順を、メンタークラブ8月号で音声教材にしました。

メンタークラブでは、全米5大ビジネスコーチのジェイ・エイブラハムを師として、その教えを学びつつ、日本人にわかりやすくアレンジしたマーケティング解説や、スタッフの経営者マインド育成に効果の上がる教材をオンラインでお届けしつつ、全国支部での勉強会を開催しています。

 

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島藤真澄 (ShimaFuji IEM代表)

フォーブス誌選出全米5大ビジネスコーチ,ジェイ・エイブラハムの東アジアディレクター(交渉代理人)。様々な案件のプロデュースや海外とのビジネスマネジメントを行う。

ジェイの『限界はあなたの頭の中にしかない』PHP研究所を企画・翻訳。

 

その他の島藤コラム:

日本で個人コンサルがエセ扱いされる理由

日清CM中止に思うこと?SNS時代の企業広告とマーケティング

 

テストプランの重要性をプレゼントから学ぶ

こんにちは、トイアンナです。
マーケティングの専門知識をわかりやすくお伝えする本連載、今回は「好きな子へあげるプレゼント、どうやって選んでいますか?」
という質問から始めさせていただきます。

彼女の好きなブランドから、それとも最近自分が気に入ったものから?
まずは、実際にあった失敗例をご覧ください。

キャバクラ嬢へ入れ込んだ男性の例
ある男性がキャバ嬢に本気の恋をしてしまいました。
この話をすると「もう21世紀になってしばらく経つのに、まだこんなことあるんですか?」
と女子大生なんかには呆れられてしまうのですが、惚れた腫れたはどうしようもない。

男性はそれまで勉強一筋のまじめが取り柄なサラリーマン。
趣味もなかったのでコツコツ貯めて、なんと30代前半で1,000万円をため込みました。
ところが取引先との付き合いで行ったはずのキャバクラで運命の恋に落ちてしまいます。

そこで彼はとんでもない冒険をします。
今までの貯金を全部切り崩し、なんと彼女へマンションを買ってあげたのです。
キャバクラでこのように有り金を全部注ぎ込んでしまう客は、かえって嬢に警戒されます。
有り金を使い果たして「パンク」してしまうと、ストーカーになってつきまとうケースも少なくないからです。

参照:キャバ嬢のちょっと怖い話
パンクした客がストーカー化。近所からの苦情で引っ越しするハメに…
http://npn.co.jp/article/detail/41090915/

そこでカレンさんも怖気づいたのか、彼との連絡をカット。
一緒に住むつもりだったマンションも受け取ってもらえず、今は彼ひとりで住んでいるそうです。

しかし、彼のことを笑う資格は少なくとも私にはありません。
恋愛でも貢ぐタイプだったから……というのもありますが、
仕事で「絶対にいける」と思った投資へ大金を放り込み、無駄にした古傷があるからです。

テストプランの重要性

「初めからそんな女選ぶなよ」と、キャバ嬢に貢いだ男性の話を聞いた私たちは思います。
でもそれをビジネスに置き換えて
「初めから失敗するような場所へ投資するなよ」と言い換えると、
そりゃ無理だと言いたくなりませんか?

恋愛でもビジネスでも、私たちは失敗をします。
時には周りから見さえすれば一目瞭然の間抜けな投資もします。
けれど、投資では失敗の傷を浅く済ませる方法があります。
小規模な投資で試すことです

キャバクラの男性に例えるなら、いきなりマンションを買うのではなく、
例えばバッグや財布など「ちょっとしたプレゼント」をしてもよかったでしょう。
そこで彼女がキャバクラを半年以内に辞めてくれそうな気配があるのか探れば、そんなことないと気づく日が来ます。

ビジネス、特にマーケティング領域では小さい額でまず試してみることを「テストプラン」と呼びます。
1,000万円の企画なら100万円以下で、100万円の企画なら10万円以下で。
懐があまり痛まない額で試し、失敗したときの傷を浅く済ませるのです。

負けないことで勝つマーケティングを

マーケティングの天才、ジェイ・エイブラハムは
「市場で何が起きているかテストしない、改善しないでは結果が得られるわけがない」
と言っています。

冒頭の彼もマンションを貢いでしまう前に
「バッグならどうか」「手料理ならどうか」
と様々な懐がそれほど痛まないテストプランを実施したら、もしかするとどれか1つが心に刺さって
「私、やっぱ仕事辞める。それで付き合いたい」
と言う可能性だってゼロではありません。

ここではさらに深く掘り下げて A/Bテストというテストプランをご紹介します。
まずこの世に出したい販売戦略を何個も考え、そのうち2つをA案とB案として世に低予算で出すのです。
その後はあたかもトーナメント戦のように、より良い売上を出したプランだけを生き残らせ、
もっともよい成果を出したプランだけに大きな投資をします。

たとえばあなたが個人で化粧品を販売しているなら
「日焼け防止に○○」と「焼けてからでも間に合う○○」の2パターンのチラシ配布を、
チラシを持って来店したら割引サービスをつけて試してみます。

もしより多く持ってこられたチラシが「焼けてからでも間に合う○○」だったら、
次の案「日焼け予防と美白を一緒にできる○○」と試し、そしてまた残ったものを別の案と試していくのです。

ここまで精密に比べていく必要があるの? と思われるかもしれませんが、
テストプランを重ねると最初の案とは大きな差が出ます。

実際にA/Bテストを繰り返して100万人に登録されたアプリ「ひまチャット」の事例がわかりやすいので、どうぞご覧ください。

参照:ABテストで「女の子クリエイティブ」の神話崩壊。
まったく出会えないチャットアプリ「ひまチャット」が教える、意外だったABテスト事例4選
http://appmarketinglabo.net/himachat/

マーケティングはあたかも山師のように「荒唐無稽なプランを練って、あてずっぽうに売り込む」と思われていることがあります。
しかし事実はその逆。
しつこいくらい低予算でテストプランを繰り返し、売れると思ったら投資する。
マーケティングは「負けないことで勝つ」考え方なのです。
あなたも必ずビジネスで勝つために、まずは負けない勝ち方を選んでみませんか?

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

「ペルソナ」で分かるマーケティング

こんにちは、トイアンナです。
今まで500名以上から人生相談をいただいておりますが、
その中でも「結婚したいんです」は断トツ多いです。
そして「結婚したいんです」とおっしゃられるたびに、
私が必ず質問していることがあります。

「どんな方と結婚したいんですか?」と。

具体的なイメージがあると婚活しやすい

質問に対して、たいていは「誠実な人」「優しい人」
「僕を好きでいてくれるんなら何だって……」という答えが返ってきます。
しかしそのフレーズだけでは1人の人間として結婚相手を想像するには至らないので、
もう少し具体的な言葉を入れてみましょう。

たとえば私の友人が創造した結婚相手のイメージは下記のとおりでした。

    1. – – – – – – –
  • 「普段は看護師として仕事を頑張る24歳の女性。
  • 仕事場ではキビキビ働くカッコイイ姉御肌。
  • トラブルもばしっと解決するけれど、プライベートでは家でのんびり過ごしたいタイプ。
  • 趣味は最近始めたパン作りで、よく作りすぎては近所へおすそ分けしている。
  • 彼女のお父さんは無口な人。彼女の進路へも口出ししてこなかったけど、大事な時は娘を守れる人。
  • 彼女の悩みは友達が女子ばかりなこと。
  • 姉御!と頼られるのが嬉しい反面、出会いがなくて悩んでる」
      – – – – – –

いくらなんでも妄想しすぎでしょう! と考えるかもしれませんが、
ここまで細かく設定があると具体的に結婚したい女性像が見えてきませんか?
婚活では理想の相手が出没しそうな場所を探すのも重要な戦略のひとつ。

「1人の人間」として頭に結婚相手を思い浮かべば、
おのずと出会いの場所も見えてくるはずです。

ペルソナマーケティングを知ろう

実はこのように「あたかも1人の人間がいるかのように、狙いたい相手を想像すること」は
マーケティングでもよく採用されており、専門用語で「ペルソナマーケティング」と呼びます。

ペルソナとはもともと演劇で使う「仮面」を意味する言葉。
あなたの狙いたい人が身にまとっている「仮面」を想像することで、
どうやって売り込むか戦略を立てるのです。

ここからは、実際にペルソナマーケティングを実施して大成功を収めている、
スープ専門店A社の事例を見てみましょう。

A社は関東圏の都心駅ナカを中心に発展したスープ専門店。
オープンからわずか10年で売上高42億円、店舗数52店舗を展開しています。
スープを売り出すうえでA社が徹底したのがペルソナマーケティングでした。

社内資料では実際に女性の名前を付けた「ペルソナ」を作成。
春日りさ(仮名)として人格をイメージしていました。
そのペルソナはこんなイメージです。

  • – – – – – –

  独身で経済的に余裕があるキャリアウーマン。

  郊外から都心へ通勤しており、駅ナカにあるカフェで休憩することが多い。

  社交的な性格でありながら、自分ひとりの時間も大切にしている。

  シンプルなインテリアを購入するのが好きで、

  装飾でゴテゴテしたものより機能重視。

  プールではクロールでいきなり泳ぎ始めるタイプ。

  • – – – – – –

スープ専門店のターゲティングなら「駅ナカをよく使う」は大切な情報ですが、
それ以外のインテリアを買う趣味や、泳ぎ方は一見商品と全く関係ありません。
しかしこういった情報が加わることで
「この内装って、春日りさっぽい」
「このテイストは春日りさじゃない」といったイメージを全員で持つことができます。

■ あなたの商品のペルソナは?

ではここから、あなたの商品やサービスで実際に「ペルソナ」を作る方法をお伝えしましょう。
一番簡単なのはすでに常連となっているお客様の顔を思い浮かべることです。
以下に例を挙げてみますので、あなたの事例でも考えるきっかけにしてみてください。

  • – – – – – –

  私のネイルサロンに来てくれるのは高橋麻里さん。

  33歳独身の派遣社員で、デスクワークからの冷え性と肩こりに悩んでる。

  仕事に疲れた瞬間にネイルを見ると癒される。

  選ぶインテリアはブラウン調のものが多いんだけど、

  たまにかわいいものが欲しくなってキャラクターグッズを買う。

  「まあ、しょうがないんだけどね」が口ぐせ。

  休みの日は10時まで朝寝坊するのが楽しみ。

  どっぷりスピリチュアルじゃないけど、カラーストーンとか置いてある。

  • – – – – – –

いかがでしょうか?
もし思いつかなくなったら「料理なら何を注文するか」
「スポーツをするなら何をしたがるか」
「旅行へ行くならどこにするか。それはなぜか」
といった妄想でターゲット像を広げてゆきましょう。

■ ペルソナが「狙いたい像」と違ったら

最後に、あなたが作るペルソナが「本当に売りたい人のイメージ」と異なった場合についてお伝えします。

ペルソナはいまあなたの商品やサービスを使っている人を明確にするだけで、理想像とは限りません。
もしこれから現在のペルソナとは別のタイプへ商品を売りたいのであれば、
まずは「理想のペルソナ」を作りましょう。
そして「理想のペルソナ」がどういった場所に現れるか、
あなたの商品にどういった良さを見出すかを考えてゆきましょう。

次回は「うちの商品を使うペルソナなんて、いないんだけど」
という悲しいご相談を解決いたします。

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トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com