新・日本語

福沢諭吉と言えば、どんな人物を思い浮かべますか?
啓蒙思想家
慶應義塾の創設者
一万円札の人
どれも正解ですが、彼は偉大な「翻訳家」でもあります。

それは幕末。鎖国が解かれて外国文化・外国語が日本に入ってくると
困った事態が生じました。
Mountainなど、対応する訳が存在していた単語もありましたが
多くの言葉には、その概念自体が日本に存在しませんでした。
福沢諭吉はそんな中、多くの「新・日本語」を創造していったそうです。
例えば「自由」という言葉も、日本語として採用したのは彼なのだとか。

あるとき、福沢諭吉が「権利」という日本語訳に猛烈に
反対したことをご存知ですか?
自分の「利益」を意味する「利」という漢字を用いるべきではない、
不変の真理や道理を表すものとして「権理(そして通義)」とすべきだ、と
強く申し立てたそうです。
あくまで「権利」とするのであれば、未来に禍根を残すことになるとも
おっしゃったとか。
確かに、自分勝手なわがままが「権利だ!」と主張される現在
それは的を射た指摘だったように思えてなりません。

「言葉は生き物。しかも、魔物…」と私は日々感じています。
実際に、毎年のように新しい言葉が日本語として採用されて
有名な辞書にも載るようになるほど。
人間が使うようになってこそ言葉は「生きる」ようになるわけですが
ときにはそれが人間に作用を及ぼすようにも思えてなりません。

ジェイ・エイブラハム師は、たくさんの造語を生み出しています。
Relational Capital
Proprietary concept
など、翻訳の際に頭を抱えた造語は少なくありません。
いずれも、非常に道徳的だったり、概念自体は日本に昔から
存在するものだったりするだけに、難しさを感じます。

「きっとジェイさんの考えが日本でも広く受け入れられて
ジェイさんの造語が一般的な日本語として使われる日がくる」
そう思う私は、翻訳する者として、思い責任を感じます。
それは、ジェイさんのお考えの本質をできる限り正確に伝えられる
相応しい言葉や漢字を、何千何万の中から慎重に選んで
組み合わせていく作業です。

苦しいときもありますが、一万円札を見るときに、私は思うのです。
短期的な見方で「よさそう」な訳に飛びつく翻訳者ではなく
苦しくてもしっかり言葉と向き合って
その本質を伝えることのできる
強い翻訳者になっていきたいものだと。

(a_washiyama)


a.washiyama

a_washiyama:
ShimaFuji IEM 翻訳チームのメンバーです。
翻訳家としてまだまだ勉強中ですが、ジェイさんのお考えを分かり易く、正確にお伝えできるよう、邁進して参ります!