保護中: 「顧客が求めているが手に入っていない」ニーズを見つけるマーケティングの手法

この記事を購読するにはログインしてください

「顧客が欲しているから」と全部与えてはいけません。マーケティングのニーズを考えるヒント

こんにちは、トイアンナです。
顧客が欲しているモノを、マーケティングでは「ニーズ」と呼びます。ニーズを満たすことは、売上の至上命題。マーケティングとは「ニーズに始まり、ニーズに終わる」といっても過言ではありません。しかし、お客様へお話を伺っただけでペラペラとニーズを教えてもらえることは、ほとんどありません。

というのも、多くのお客様は「ウソ」をつくからです。

「インサイト」を復習しよう

気分が悪くなるたとえで申し訳ございませんが……たとえば「今年、新しい夫と再婚した。前夫との子も家にいるが正直疎ましい。できるだけ家の外にいてくれれば、夫とふたりきりで過ごせるのに」と考える女性がいたとします。

果たしてこの女性は、ヒアリング調査で本音を答えてくれるでしょうか?

答えはもちろん、否、でしょう。「自分の子どもが疎ましい」「できるだけ家の外にいてくれれば夫と過ごせる」という気持ちは、社会的にとうてい認められない感情だからです。

したがって、この女性はこんな相談をあなたへしてくるでしょう。
「うちの子ももう中学生だから、そろそろ塾へ通わせたいんだけど」
「可愛い子には旅をさせよというじゃない。夏休みを利用した交換留学ってどうかしら」

そこであなたが短期間で効率的に学習できる塾や留学先を選び抜いたとしても、感謝してもらえないことでしょう。なぜならこの女性のニーズは「できるだけ長期間、子どもを外へやれるサービス」だからです。

人は本音のニーズをなかなか声には出しません。このように人が表立っては言えない、隠れたニーズのことを「インサイト」と呼びます。

「顧客が欲している」ものは、えてして表層的な嘘です。そのままのサービスを与えても、売上に変化はないでしょう。

インサイトを見つけるには、仮説を準備しよう

では本音のニーズこと、インサイトを見つけるにはどうすべきでしょうか。この記事ではインサイトへ近づく「ヒアリングのやりかた」をご案内します。

まず、ヒアリング調査を実施する前に「仮説」を用意してください。

たとえばあなたが地域の塾を運営しているとしましょう。塾のニーズとして、どんなものがあるか親の気持ちになりきって想像します。

ここでは私が仮説として3つのニーズを想定しました。
仮説1 子供を塾へやりたい親は、子どもの成績を純粋に心配している
仮説2 子どもを塾へやりたい親は、子どものいない時間を満喫したい
仮説3 子どもを塾へやりたい親は、なるべく長時間預けて高みを目指させたい

仮説が出来上がったら、それを「検証」するためにはどんな質問をすべきだろうか?と考えてみてください。実際に仮説ごとの質問例をご紹介します。

仮説1 「子供を塾へやりたい親は、子どもの成績を純粋に心配している」を検証したいときのヒアリング質問例
1日1時間の塾で、偏差値が20上がる塾があったらどう活用したいですか?
この質問では、成績と子供が早く帰宅することをセットにすることで「長時間預けたい」親の可能性を排除します。親が「だったら早く帰ってきてくれて成績も上がるしありがたい」と答えるなら、その親は子供の成績を純粋に心配しているだけだ、と言えるでしょう。

仮説2 「子どもを塾へやりたい親は、子どものいない時間を満喫したい」を検証したいときのヒアリング質問例
親をやっていると、自分の時間がなくてしんどいと感じますか?
この質問では親が子育てに抱えている苦労や不満を確認することができます。特に仮説1と併せて質問すれば、自分の時間がもっとほしい、と親がヒアリングでおっしゃるなら「子供を塾へ長時間預けること」が成績アップよりも優先したい項目なのかどうかがわかります。

仮説3 「子どもを塾へやりたい親は、なるべく長時間預けて高みを目指させたい」を検証したいときのヒアリング質問例
塾へ長時間預けたくても経済的に悩まれることはありますか?
たとえ仮説1、仮説2の質問で「子供の成績を純粋にあげたい」と結論づけたとしても、トップ校進学をさせるために長時間預けたいというニーズがあるかもしれません。その場合親御さんが考えるのはコストのお悩みです。有名塾なら月10万円単位なこともあります。この質問では「子供の学力を純粋に上げてもらうために長時間預けたくても預けられない。有名塾と同じクオリティでもっと安い塾があればいいのに」というインサイトが見つかるかもしれません。

優れたインサイトは、優れた製品につながる

このように優れた仮説を用意できれば、インサイトへ近づきやすくなります。すぐれたインサイトが見つかれば「じゃあ、弊社では○○を差別化して新しい製品・サービスを作ろう」と策が浮かぶものです。インサイトを掘り起こし、適切なサービスを提供できるかどうかは
あなたの仮説力にかかっています。ぜひ、質の高いヒアリング調査をお試しください。

 

 

 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

ジェイエイブラハム来日講演が開催されました

2017年12月5~8日、ライブクリエイトさん主催で来日講演が行われました。
弊社は、登壇者(アンソニー・ミンク、ピョートル氏、西野亮廣氏)の登壇交渉を行いました。

12月7-8日雅叙園で行われた「ホットシート(グループコンサル)」は
島藤がファシリテーションを行なっております。

また、ジェイエイブラハムとアンソニーミンクのアテンドも期間中対応いたしました。

 

 

芦屋市民講座:女性起業塾を開催しました

30名定員のところ、42名の方々にご参加いただき、
全6回で、起業の心得、マーケティング、戦略、仕組みかなどを
学んでいただきました。

事業プラン発表とその組み立ての授業は、大幅に時間を延長して
4時間に及ぶ個別コンサルとなりました。

大変好評をいただきました。

保護中: マーケティングに反対する従業員を動かす方法

この記事を購読するにはログインしてください

顧客を友とするなら、従業員は友になりえない。マーケティングを志す覚悟

こんにちは、トイアンナです。
私はこれまで起業を3回ほど経営しており、中小らしく資金繰りに奔走してまいりました。一度会社員を経験してから経営者と比較してみると、経営の仕事の「主」は資金調達だなとしみじみさせられます。

さて、資金調達にはVCからの投資や株式売買などさまざまな手法がありますが、その中で「顧客の方を向き、売上を上げる」のがマーケティングです。企業は資金を手に入れても最終的に売上・利益へ還元できなければ立ちゆきません。ですから企業とは「顧客を最優先にせざるをえない」組織です。

もし経営者が株主のことだけを考えるなら、粗悪な製品を高く売った方が利益率も上がり還元できる額も増えます。しかし経営者が毎回そうしないのは、長期的な利益に反すること、すなわち顧客からそっぽを向かれると分かっているからです。その代わりに経営者は「マーケティング」を使って売上と利益を上げようとするのです。

 顧客を最上の友とするならば、そうでなくなる相手もいる

マーケティングの天才、ジェイ・エイブラハムは、顧客を「かけがえのない友人のように扱え」と言います。自社製品をやみくもに「売りつける」のではなく、どうすれば相手の本当の望みを果たせるか心を尽くすこと。それがどれほど重要かは、経営者ならだれもがご存知でしょう。

しかし顧客を最上の友にするということは「最上の友にしない相手」を決めることでもあります。戦略は常に優先順位を定めることであり、「みんなお友達」というわけにはいかないからです。

冒頭の例に出した株主は多額の利益を還元してもらえるにも関わらず、顧客が目にする広告宣伝費や、将来の研究開発へ利益を回すことを許さねばなりません。短期的には損失扱いになるけれど、長期的に企業の株価を上げるにはこれしかない、と株主を説得せねばならないのです。

 従業員へ「お客様を最優先にさせる」難しさ

従業員も同様です。人件費へ還元できるほど稼いでいても「来年の製品をもっとよくしよう」「お客様から話を伺う調査費にしよう」と他のコストへ使ってもわらねばなりません。さらに言えば、そのことを誇りに思い、顧客へプレゼンせねばならないのです。

従業員は給与のために働いているのですから、マーケティングを重視して広告や調査、研究に予算を使うことは彼らの利益に反します。従業員は経営者ではないのですから「こんなことに金を使うなら、ボーナスをちょうだいよ」と思うのが普通でしょう。そして、もっと高い給与がある会社へ離職する方も出るでしょう。

ではそれでもなぜ、マーケティングをするのか。それはマーケティング・スキルを使いこなせば長く勝てる企業になるからです。長く勝てれば、従業員へ報いることができます。長く自社へ残ってくれた社員へ給与で見返りを渡すことができるのです。

さらに申し上げれば、従業員は自社を知る「最初の顧客」でもあります。自社を誇りに思ってもらい、自社製品・サービスを愛し、拡散してもらう。その従業員へ報いたいのであれば、最初に人件費を削ってでもマーケティングへ資金を割きましょう。投資家、株主、従業員へ報いたいなら、まずは顧客の方を向き戦略を立てること。この優先順位が崩れるならば、今は売れている製品も、数年後には暗雲立ち込めることでしょう。

 それでもなぜ、マーケティングをするのか

口だけで「マーケティングを重視する」「お客様第一主義」と語ることはできます。しかし徹頭徹尾それを実現するということは、他のプレーヤーを最優先にしない、という覚悟が必要です。

「短期的に割引や短い納期で勝つよりも、200年残る会社を作る」
「真に顧客から愛され、広告宣伝費がゼロでも従業員を食べさせる会社になる」
「来期だけではなく、10年株主へ報いられる企業になる」

それが、マーケティングの存在意義です。

もちろん、10年後に勝つためには今期、そして来期も成長せねばなりません。いきなり10年後、ポンと利益が降ってくることはないのです。しかし「割引セール」「大安売り」など目先の手段を愛用するだけでは、あなたの会社は残りません。

価格とは違う観点で「ここの製品・サービスは違う」と思っていただくこと。そのためには機能で実際に差をつけるだけでなく、それを顧客に認知してもらい、愛してもらわねばなりません。良いものを作れば売れる、そう信じられるのは最初の100人へ商品を売るときだけです。それ以上の市場に打って出るには「知られる」「愛される」「購入される」「リピートされる」のすべてに戦略を立てねばなりません。

そのためにもジェイ・エイブラハムが提唱したビジネスを大きくする3つの原則「顧客を増やすか」「使用頻度を上げる」「単価を上げる」手法をマーケティングを通じ、考えていくべきなのです。言葉だけの「お客様第一」を脱却するためにも、マーケティングを学び、使いこなしてください。
 


トイアンナ
大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。
ブログ:http://toianna.hatenablog.com

千秋育子さんインタビュー

島藤真澄インタビューシリーズ:千秋育子さん(イラストレーター)

今回は世界的に活躍されているイラストレーターの千秋育子さんに
お話をうかがいます。

スタートからどのように仕事をしていったか、
プレゼンのやり方、イラストというお仕事についてなど、興味深い話が続いていきます。


 

 

起業前にやっておくべき5つのこと

(※この記事はhttps://www.linkedin.com/pulse/5-must-dos-before-becoming-entrepreneur-j-t-o-donnell/を翻訳したものです)

by J・T・オドネル

多くの社会人が、やりきれない思いを抱えながら、今日も仕事をしています。あなたもそのひとりではありませんか?

先のギャラップ調査によると、労働人口の87%が自分の仕事に「やりがいを持てない」と感じている(言葉を換えると、楽しんではいない)ことがわかりました。こうした人々の多くは、いつか起業する日が来るのを夢見ているのではないでしょうか。
みんな、雇い主のために働くことを、金でできた鎖につながれたように感じ、どこかでうんざりしているのでしょう。不満を抱えた社員のかなりの数の人々が、自分のために働き、コントロールしているのは自分だと実感する日を空想するのです。

けれども、仕事を辞めて、フルタイムの起業家になる前に……
私はこのことをお聞きしたいと思います。

では、どうしてスタートアップの90%が失敗しているのでしょうか?
フォーブスの記事によると、アメリカでは新規事業の90%が失敗しているということです。どうしてなのでしょうか?

それは、多くの人が、立ち上げの時期を生き延びる準備ができていないからです。そのために多くの人々が生計を支えることができなくなってしまうのです。

ものやサービスを売ることは、多くの人が考えるより、大変なことです。起業家も情熱だけでは成功できません。

先日、私は「ユー・ユニバーシティ」のポッドキャストで、創設者のマイケル・ペッグズからインタビューを受けました。その中で、私たちは起業までの道のりについてや、自分が「私の仕事」であると実感することが、のちに起業家へと成長していく上で助けになることについて、話し合いました。

「私の仕事」を成功させるために何が必要か、ということや、どうして私が起業家になろうと思うようになったかを話しながら、私は、野心的な起業家が全員、会社を立ち上げる前にやっていたことについて、考えさせられたのです。

そのときの話はさておいて…

ここでは、そこから5つのアドバイスをお送りしましょう。

1. できるだけたくさん貯金をしておくこと

すくなくとも給与1年分、できれば2年分が必要です。事業を起こすのにかかりきりになる間、収入の心配をしないですむようにしておくのです。
起業時に、金銭的に余裕があればあるほど、受けるストレスも少なくてすみますし、そうなれば肝心のビジネスでも、良い決断を下しやすくなります。

2.あなたの情熱と、人々が抱えている問題が交差する地点を見きわめる

すべては需要と供給の関係にあります。
お客様が買いたいと思うものをあなたが提供できなければ、うまくやっていくことはできません。
反面、あなたが起業家になることを選んだのは、好きなことがやりたいという情熱があったからです。

解決策は、この両方のベクトルが交わるところを探すことです。
あなたの情熱と、人々が抱える問題が交差する地点を見きわめられれば、あなたは価値のある、しっかりした提案をもって、あなたのビジネスをスタートさせることができるでしょう。

3. あなたのネットワークのために働く

ビジネスをうまくスタートさせるためには、できるだけ大きな支援の輪が必要です。専門家や同僚、友人、家族からなる、広汎なネットワークが不可欠なのです。

起業家としての船出に際して、周囲の人々に支援を要請する時のために、あなたは彼らの要求に応えることで、「信用の貯金」をしておく必要があります。それが「ネットワークのために働く」ということなのです。

あらゆる機会を通じて、周囲の人々の助けになる方法を、知っておきましょう。そうすれば、みんなもあなたのことを大切に思い、信頼してくれるはずです。たとえば…

  • 周囲の人と必要な情報やリソースを分かちあう
  • 空いた時間をボランティア活動にあてる
  • あなたのネットワークに属する人が、互いに親しくなれるように手助けする

これらはほんの一例ですが、あなたが今日、ネットワークのために働いておけば、明日はネットワークがあなたのために働いてくれることを忘れないでください。

4.あなたの「起業までの道のり」のストーリーを作る

これは、起業家として成功するためには、不可欠の要素です。成功した会社にはかならず、すばらしいストーリーがあります。とりわけ起業家は、その物語を熱意と確信をこめて語ることができます。

紆余曲折に満ちた物語でなければなりません。感動を呼び、人々が夢中になり、行動を起こしたくなるような。何より大切なのは、誰もがあなたのビジネスが成功するよう、応援せずにはいられなくなるようなストーリーであることです。

あなたが起業家として成功したいなら、あなたの「起業までの道のり」は、細部まで明確で、うまく語られなければなりません。自分のストーリーをおもしろく語る方法を学ぶことが重要になってくるのです。
まずはストーリーの細部をはっきりさせ、確かなものにすることから始めて、感情に訴えかける山場を作ります。

5. あなたのストーリーをシェアする ― できるだけ大勢の人と!

あなたのストーリーができたら、今度はそれをみんなに知ってもらわなければなりません! 同僚や、家族や、友だちとシェアしましょう。オンラインでも、オフラインでも、できるだけ大勢の人と。あなたのストーリーを話す相手は、多ければ多いほどいいのです。

あなたがビジネスを始めるらしい、という評判を取っておくことが重要です。どうしてあなたが熱意を持って会社を設立しようとしているのか理解してもらえれば、みんなあなたを支えてくれます。けれども、そのことはあなたが語って聞かせなければ、誰にもわかってもらえないのです!

ここにあげた5つの秘訣が、あなたがいつの日か旧態依然の職場を離れ、起業という船出を果たす助けになることを、願ってやみません。

自分の会社を運営することは、苦労するだけの報いがあります。ただし、それもうまくやってのけてこそ、なのです。もちろん困難なことや紆余曲折があるでしょうが、あらかじめできる準備をしておけば、失敗のリスクを抑えることになるはずです。

上にあげた5つは、おそらくその助けになるでしょう。

幸運を祈っています。


元記事:http://linkd.in/1Cun9yB
(翻訳:服部聡子)

米国ベストセラー:『Hit Refresh』

(※この記事はhttps://www.amazon.com/Hit-Refresh-Rediscover-Microsofts-Everyone-ebook/dp/B01HOT5SQAを翻訳したものです)

Hit Refresh: The Quest to Rediscover Microsoft’s Soul and Imagine a Better Future for Everyone

『ヒット・リフレッシュ:マイクロソフトの魂を再発見し、よりよい未来を想像するための探求』
著者:サティア・ナデラ

――『ヒット・リフレッシュ』の根底にあるテーマは、私たち人間と、私たちが共感と呼ぶ独自の性質についてである。テクノロジーの急流が現状をかつてないほど激変させるであろう世界において、共感はこれまで以上に重要になる。」-本書より

――サティアは、テクノロジーによってもたらされた難題に正面から立ち向かいながらも、同時にチャンスを最大限に活用する方向へ導いてくれる。-ビル・ゲイツ(本書序文より)

『ヒット・リフレッシュ』のテーマは、私たち個々人の変化についてです。
そして、マイクロソフト社内において起こっている変革や、すぐに私たちの生活にも影響を及ぼすであろうテクノロジー、つまり人工知能、複合現実感、量子計算といった人類が経験してきた中で最も刺激的で破壊的なテクノロジーの波の到来についてでもあります。同時に、人々や組織、社会が、新しいエネルギー、新しいアイディア、そして絶え間ない変化とそれへの対応のあくなき探求において、どのように変革し「更新する」ことができるか、またするべきであるか、についてでもあります。

マイクロソフト社のCEOが、インドで過ごした自らの子ども時代から始まり、このデジタル時代において、いくつもの重要なテクノロジーの変化を導くに至った道のりをたどりながら、マイクロソフト社の絶え間ない変革にまつわる知られざるエピソードについて語ります。

サティア・ナデラは、アメリカへ移住する前の興味深い子ども時代からこれまでに、どのようにリーダーシップを学んできたのかを振り返ります。さらに、聡明なビル・ゲイツやエネルギッシュなスティーブ・バルマーといった前任者と比べるとほとんど知られていない存在である彼が、マイクロソフト社の現職のCEOの座にあることについての深い思索を語ります。そして、マイクロソフト社がどのようにその魂を再認識し、文化から熾烈な競争環境、産業パートナーシップまでの全てを変革したのかという知られざるエピソードを語るのです。人道主義者であると同時にエンジニアであり経営者でもあるナデラは、次に来るテクノロジーの波についての自身の展望と、それによる社会への潜在的な影響を探り、世界的なリーダーたちへ行動を呼びかけて締めくくります。

「アイディアは私をわくわくさせる」と、ナデラは言います。「共感は私の土台であり、軸でもある」とも。
改善を探求し、信念を持って考え抜くリーダーは、振り返りや内省、助言をもとに、彼自身や著名な企業、そして社会に向けた一つの道筋を示しています。


元記事:https://www.amazon.com/Hit-Refresh-Rediscover-Microsofts-Everyone-ebook/dp/B01HOT5SQA
(翻訳:高橋裕子)

ラリー・ペイジやイーロン・マスクが恐れたもの

(※この記事はhttps://www.linkedin.com/pulse/overcome-fear-failure-instead-adam-grant/?trk=prof-postを翻訳したものです)

by アダム・グラント

仮にあなたが計算をしてみるならば、起業家になるなど正気の沙汰ではないと思えるでしょう。
 成功する確率たるや、微々たるもの。失敗が約束されている、と言ってもいいかもしれません。
そんな世界へ踏み出そうとするのは、よほど恐れを知らない人なのだろう…。
 以前の私はそう思っていました。

過去3年間、私は『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』の執筆に取り組んでいました。この本は、創造性を推し進め、世界を変えようとする、斬新なアイデアを生み出す人々を取り上げています。その過程で私は、現代のきわめて独創的な起業家の足跡を追っていきました。ラリー・ペイジ、イーロン・マスク、ジャック・ドーシー、マーク・キューバンという、テクノロジーの分野で偶像視される人々と、ひざを交えて話し合ったのです。

彼らに起業間もない時期のことを振り返ってもらったのですが、彼らの返答は、私にとって、まったく思いがけないものでした。彼ら全員が、私たちの誰もが感じている失敗への恐怖を抱いていたのです。単にそれに対する反応が、異なっていただけだったのです。
私たちの多くは、失敗の恐怖にとらわれたとき、大胆なアイデアは避けようとします。独創的であるよりは、安全策を選んで、従来と同様の商品、慣れ親しんだサービスを販売しようとします。
ところが偉大な起業家は、失敗の恐怖に対して、異なった反応を示すのです。確かに彼らも失敗は恐れます。けれども、失敗を恐れて挑戦しないことの方を、もっと恐れるのです。
仕事でも、人生でも、恐れには2種類のものがあります。行動することの恐れと、行動しないことの恐れです。起業して失敗するかもしれません。けれども、起業せず、失敗するかもしれないのです。土壇場で結婚相手に逃げられるかもしれませんが、かといってプロポーズせずに後悔するかもしれません。
ほとんどの人は、アクションを起こして後悔することの方が多いと考えます。破産宣告や、生涯の愛を拒否されることからくる耐え難い苦しみを思うと、ひるんでしまうのです。
 けれども、それはとんでもない間違いです。
人が人生を振り返って後悔するのは、やらなかったこと、行動しなかったことに対してです。
心理学者のトム・ギロビッチとビッキー・メドベックはこのようにまとめています。
長い目で見れば、どのような年代であれ、どのような分野であれ、人間はやったことを後悔するより、やらなかったことを後悔するようです。だからこそ、なぜ大学へ行かなかったのか、とか、ビジネスチャンスをつかまなかったのか、家族や友人ともっと時間を過ごさなかったのか、といった後悔を、多くの人が抱いているのでしょう。
 結局のところ、私たちが何よりも後悔するのは、失敗することではなく、行動する機会を逸することなのです。
それを踏まえれば、どうして人は独創的になるのかわかってきます。レオナルド・ダ・ビンチは繰り返し、ノートにこう書きました。
 「まだ手を付けたことがないものが、どこかにないだろうか」
 おそらく彼も失敗することを恐れていたでしょうが、それよりも、重要なことを成し遂げられないことの方を恐れたにちがいありません。その恐れに駆り立てられて、ダ・ビンチは絵を描き続け、発明し、設計し、究極のルネサンス的教養人となっていったのです。
ダ・ビンチは私にインタビューをさせてはくれませんでした。けれども私が会った起業家たちは、みんな、失敗することは怖くない、重要なことをしないことが怖いのだ、と繰り返し言いました。
そのために彼らは努力を続け、新しいアイデアの実現にトライし続けるのです。
独創的な人々は、失敗を、自分のアイデアが失敗する証拠だととらえる代わりに、成功へ向かうための必要な段階だととらえます。
私たちは、成功よりも失敗から学ぶのです
 たとえば、スペースシャトルは失敗に終わった打ち上げを経験してから、周回軌道に乗る可能性が高くなるのです。失敗することによって、知識の欠けている点や、戦略が正しくないことが明らかになり、私たちは計画段階に戻って、その点を修正しようという気持ちになるのです。
失敗がないと、自己満足が忍び寄ってきます。NASAの場合は、24回の宇宙飛行の成功が過信につながり、チャレンジャーの事故が起こりました。
物理学者のリチャード・ファインマンは、このように考えています。
 「彼らの頭の中では、悪いことなど起こるはずがなかったのだ」
独創的なアイデアというものは、失敗は不可避です。というのも、テクノロジーがどのように進化するか、好みがどう変わっていくか、と予想することは不可能だからです。
マーク・キューバンはUberへの出資を見送りました。
初期のグーグルでは、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンは、検索エンジンを200万ドル以下で売り出そうとしたものの、買い手は現れませんでした。
『ハリー・ポッター』を持ち込まれた出版社は、児童書にしては長すぎるという理由で出版を拒否しました。
 TV局の重役は「となりのサインフェルド」はプロット・ラインが不十分で、登場人物が好ましくない、という結論を出しました。主役のジェリー・サインフェルドのバスルームに行けば、「となりのサインフェルド」のパイロット版のエピソードが、「弱い」「どのような観客層も、また観たいとは思わないだろう」というメモが
壁にかけてあるのを目にすることができるはずです。
歴史を通して、きわめて独創的な人々は、きわめて多く失敗を重ねた人でもあります。
 トーマス・エジソンの1093件の特許のほとんどは、海のものとも山のものともつかないものでした。
 ピカソはほんのいくつかの傑作のために、20,000点以上の作品を制作しました。
 Uberを創設する前のトラビス・カラニックが最初に起ち上げたスタートアップは、 破産宣告することになりました。
 オプラ・ウィンフリーは、最初の仕事であるレポーターをクビになっています。
 スティーブ・ジョブズは、アップルが製造・販売したLisaが大失敗に終わり、会社を追われることになりました。
のちに凱旋し、iPodを成功させたあとでも、セグウェイを個人の移動手段として、分の悪い賭けをすることになりました。
 航空会社や鉄道経営、音楽、モバイルで大きな成功を収めたリチャード・ブランソンも、ヴァージン・コーラや自動車、ウェディング・ドレスなどの分野では、失敗の責任を負うことになりました。
ですから、これらの選り抜きの人々の失敗を、あなたも信じてください。
 たとえ最初、うまくいかなかったとしても、あなたは自分が高い目標を掲げていることを知っているのですから。

元記事:https://www.linkedin.com/pulse/overcome-fear-failure-instead-adam-grant/?trk=prof-post
(翻訳:服部聡子)