売上を6割上げた奇跡の旅館に学ぶ「競合」の考え方

こんにちは、トイアンナです。
これまで何回か競合分析の方法についてお伝えしてまいりました。
「あなたの奥様を好きになる男は誰?」競合分析とは
今回はさらにステップアップして「意外な競合」の見分け方をお伝えします。

旅館の競合は「予備校」だった!?

ここで例題を出させていただきたいのですが、旅館の「競合」には、どんなものがあるでしょうか? 1分かけて考えてみてください。多分みなさまが思い浮かべる競合には、こういったものが含まれると思います。
・ホテル
・民宿
・キャンプ場
今なら、AirBnB といって一般の方がインターネットで募集して空き部屋に観光客を泊まらせるいわゆる「民泊」も盛り上がっていますね。

これらが競合であることは間違いないのですが、さらに思考の幅を膨らませて旅館とは『休みを過ごす場所』として価値があると考えてみましょう。そうすると、同じ『休みを過ごす場所』の競合が浮かび上がります。たとえば……。
『休みを過ごす場所』で競合する相手
・海外旅行
・予備校
・テーマパーク
・別荘
・テレビゲーム
・本
こうして見るともともと「競合」と考えていた企業とは全く関係ない企業が、競合になる可能性があることがわかりました。
子供の成績が下がれば、「旅館に泊まるのはやめて、そのお金で予備校に通わせなくちゃ」と親は考えますし、気になるマンガを一気に買ってしまったら、全巻読破するために休日を家で過ごすかもしれません。

婚約指輪の費用がかさむと旅館が閑古鳥になる

同じように旅館を今度は『大事な1日を過ごす場所』と捉えてみましょう。
『大事な1日を過ごす場所』で競合する相手
・高級レストラン
・葬儀のプレミアムプラン
・婚約指輪
・ビーチリゾート
・結婚式場
たとえばドラマでハワイのチャペルで挙式を行うシーンがヒットしたとしましょう。結婚を考えているカップルが海外へ流れてしまうので、日本の旅館は不利になります。婚約指輪の予算を増やしたら、その分新婚旅行で使う旅館へのお金はグレードダウンしてしまうかも。
このように「限られた予算でどこへお金を割くだろうか」と考えると、さまざまな競合が明らかになってきます。

奇跡の復活を遂げた旅館の競合分析

実は「優れた競合分析」ができたおかげで、売上を6割アップさせた「奇跡の旅館」があります。神奈川にある旅館Mは、もともとオーナーの本業が部品の製造業。旅館は製造業のお客様をもてなす「迎賓館」としての扱いでした。そのため一時は借入金が売上の3倍に膨らみ、オーナーの病没後は経営危機に陥っていました。しかしそこで新オーナーとなった息子さんは旅館を「他のホテルや宿泊施設」と戦わせない決意をします。交通の便が悪い旅館Mでは、太刀打ちできなかったからです。

その代わりに新オーナーが取ったのは、旅館を「特別な1日を過ごす部屋」として見直すことでした。実はこの旅館、かつて明治天皇陛下がご宿泊された部屋がありました。倒産直前の時期はその部屋を見学できる場所としていましたが、方針を一転。「天皇ゆかりのお部屋に泊まることができる」ことを売りにしました。泊まることができるだけならお客様も迷われたかもしれません、しかし新オーナーはさらに贅を尽くした料理を提案。チャレンジ試食回として原価を気にせずシェフへ新メニューを提案してもらい、最上級のコースでおもてなしする素地を作りました。

ただの高級レストランやホテルであれば、都内にいくらでも溢れています。しかし「天皇陛下がご宿泊されたお部屋」に自分も泊まり、最高の料理で「特別な1日を過ごす」場所であればどうでしょうか。結果として旅館Mへは富裕層や新婚旅行のお客様だけでなく、金婚式・銀婚式のご夫婦が多数来訪。売上は6割アップし、倒産の危機から一転、奇跡のV字回復を果たしました。

この成功は、あなたの成功事例にできる

旅館Mの成功事例は、決して他人の成功ではありません。あなたのお届けしている商品やサービスの「本当の競合」を考え直すだけで、ブレイクスルーとなる戦略を立てることができるのです。

ここからはぜひお客様が使う「時間」や「お金」という複数の目線であなたの競合分析してみましょう。
最後に例題を残しておきますので、私の書いたリスト以外にも競合を書き足してみてください。

・ 携帯充電器の意外な競合例
「いますぐ充電したい」という視点なら……電源プラグつきカフェ、友達の家、終電の遅い電車
「誰かに連絡を取りたい」という視点なら……ネットカフェ

・ 居酒屋の意外な競合例
「お酒を安くたくさん飲みたい」という視点なら……お酒のデリバリー店、業務用酒屋
「人に話しを聞いて欲しい」という視点なら……愚痴聞きサービス、カウンセリング、占い
←「マーケティング深化論」目次


ファイル 2016-03-04 15 23 20トイアンナ:

大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。

ブログ:http://toianna.hatenablog.com