ビジネスにも多い「差別化ごっこ」:なぜ女性が髪を切っても気付かないのか? 

こんにちは、トイアンナです。
女性のささいな髪形の変化に気付くことができない。これは年齢問わず男性からよくご相談いただくものです。
前髪だけ1cm切った、髪色を少しだけ明るくした……そんな違いに毎回気付くことができる男性がいるならばさぞモテることでしょう。

とはいえ男性も学ぶもの。友人男性はある朝、女性スタッフが出勤してから、得意げにフロアを歩いているのが目に留まりました。こういうときは髪型が変化したときだ、と察した彼。「髪、切った?」と質問したところ「いいえ、髪は何も……変えたのはネイルです!」とたしなめられてしまったそうです。

ネイル、タイツの色、スカーフに化粧……いったいどうやってこんな違いに気付けと? と呪いたくなる、些細な変化を見抜くのは難しいものです。ですがそんな男性も趣味の領域となれば事態は一変。「この時計は盤面が全て手塗りで……」「革靴はパティーヌの最上級品で……」「手帳には結構こだわってて、こいつは各ページに糸綴じ製法が……」うっとりとした表情で語る、こんな男性をご覧になったことはありませんか?
男性だって、自分の好きな分野になればプロ顔負けの微細な違いに気付くことができるのです。

こんな風に、私たちは自分が熱中している部分なら細かな変化を察知することができます。しかしその一方で深い興味を持たない分野で起きた変化に対しては鈍感なもの
ここでビジネスに立ち返って考えていただきたいのが「あなたの製品・サービス」です。

あなたの製品に1番興味を持つのは「あなた」

あなたの製品やサービスへ1番深い興味を持っている人は誰でしょうか。答えは、あなた自身です。
例えばマーカーペンを販売している私の友人は、同じ「赤色のペン」でもインクの色からにじみ、長持ちする度合いまで誰よりも詳しく知っています。彼が扱っているペンは確かにインクがにじみにくいのが魅力です。しかしその魅力を誰も知りません。なぜなら、99%の人にとってペンのにじみ度合いは、深い興味を持たない分野だからです。

同じようなことは、他の業界でも起こります。
・ 他社より1.25倍ゴミをキャッチできる排水溝のネット
・ 今までで一番薄くて丈夫なスーパーの袋
・麻酔が上手な歯医者
・ 自由にメニューを組み合わせられるヘッドスパ

これらは全て同じ業界の人間であれば「すごい差別化だ!」と思うような変化でも、一般人には「どこが違うの?」と思われかねないものです。残酷な現実ではありますが、あなたが10年かけて作った盛大なイノベーションも、お客様から見たときには「女子のネイルが変わった」くらいにしか見られないというリスクがあるのです。

大切なのは「差別化」の伝え方

といっても「技術をどれだけ磨いても、差別化へは繋がらないから研究開発はいらない」という暴論を伝えたいのではありません。
まず、よい差別化とは「メッセージがお客様目線」になっているものです。先ほどの「差別化」は全て、製品やサービスを提供する側の目線でしか違いがわかりません。しかし全て下記のように言い換えてみたら、いかがでしょうか?

・カレーの残りも三角コーナーでキャッチ、排水溝が詰まらないネット
・5kgのお米を運んでも千切れないスーパーの袋
・無痛抜歯を約束できる親知らず専門の歯医者
・20種類のメニューから自由に選べるヘッドスパ

訴求している内容は全く同じでも、より「一般の方が興味を持つ言い方」に変わったと思います。このように差別化のほとんどは言い換えるだけでお客様の心に届く強いメッセージになります。

そもそも「差別にならない」差別化もある

その一方で「差別にならない」差別化もあります。たとえばこんな例です。

・友達を呼んだら300円オフになる割引券…「そのサービス、どこでもやってるよね?」と思われてしまいます。他社でもやっているようなキャンペーンを作っても、差別化にはつながりません。
・ 最寄りの喫茶店がわかる携帯電話の新機能…「それができたところで、何の役に立つの?」とお客様は考えてしまいます。お客様が直感的に今までと違ってすごい! と思っていただけるのでなければ、差別化にはつながりません。

このような差別化のダメ事例は、他業種であれば「なんでこんなのが差別化になると思ったの?」とすぐ気付くものです。しかし実際に自分が携わる製品になるとつい「これこそが差別化だ!」と妄信してしまいがちな落とし穴もあります。

自分が作った製品やサービスはわが子のように愛おしいもの。その子が市場でモテようがモテまいが「なぜ売れないんだ、こんなにいい子なのに」と考えてしまうのはごく自然な感情です。ですがもし、あなたが「市場でモテる」製品を作りたいのであれば差別化の最低条件は、下記を満たす必要があります。

(1)競合と比べて大きな差があること
(2)買い手にとっても「大きな変化」であること

従って、差別化をするためには競合とお客様の深い理解が必要となりますし、できれば製品ができた後ではなく「商品開発を始める前」から熟考する必要があります。差別化に繋がらない研究開発へ多額の投資をしてしまった後では、取り戻すのが難しくなるからです。

次回は、誰でも始められる簡単な競合分析のテクニックをお伝えしてまいります。

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トイアンナ:

大学卒業後、外資系企業にてマーケティング業務を歴任。
消費者インタビューや独自取材から500名以上のヒアリングを重ね、
現在はコーチングやコラム執筆を行う。

ブログ:http://toianna.hatenablog.com